前回に続き、今回はSDGs建築の日本の事例をご案内いたします。

日本のSDGs建築において国際的な評価認定「LEED」でプラチナ認定を受けた2つのビルをご案内します。
LEEDとはLeadership in Energy & Environmental Designの略で、米国グリーンビルディング協会が運用する国際的な認証システムです。ビルの建設やインテリアの設計など対象別に5つのカテゴリーに分類されており、それぞれがポイント加算方式で、得点に応じてCertified(標準認証)、Silver(シルバー)、Gold(シルバー)、Platinum(プラチナ)の4段階に分類されます。なかでも最高認定のプラチナ認は、110ポイントが満点のうち80ポイント以上が必要になります。

今回ご案内するのは、「YKK80ビル」と「前田建設工業・ICIラボ エクスチェンジ棟」の二つです。それぞれ異なる部門で国内初のプラチナ認定を取得しています。

 

『 YKK80ビル 』東京都千代田区

YKKグループの本社「YKK80ビル」は2016年にオフィスビルとして国内で初めて、LEED-CS(Core and Shell・新築テナントビル部門)プラチナ認証を獲得しました。YKKはグローバル企業として環境に配慮した事業をアピールするため、計画段階からLEEDプラチナ認証を目指したそうです。「YKK80ビル」の西側のファサードは、アルミ押し出し型材の縦ルーバーで一面が覆われており、室内への日差しは太陽の傾きに合わせた遮蔽方法が考案されています。外構や屋上の緑化を施し、建築資材もリサイクル資材や800km以内で材料採取された地場材の使用にこだわっています。節水トイレには雨水や厨房排水を利用、オフィス内は空調や照明などの消費エネルギーをASHRAE(アメリカ暖房冷凍空調学会)基準より約36%を削減しています。ビル全体では一般的なオフィスビルと比べ、エネルギー消費量をなんと60%も削減しているという、プラチナ認定にふさわしい省エネビルですね。

URL: https://www.ykk.co.jp/japanese/corporate/g_news/2016/20160301.html

 

『 前田建設工業 ICIラボ エクスチェンジ棟 』茨城県取手市

前田建設工業が建設したICI総合センター内の「ICIラボ エクスチェンジ棟」は、2019年にLEED最新バージョン「LEED V4 BD+C New Construction」でプラチナ認証を日本で最初に取得しました。また2020年には国内の省エネ大賞の省エネ事例部門、資源エネルギー庁長官賞を受賞しています。
ICIラボは恵まれた地域特性と高効率な設備を最大限活用した「ZEB(Net Zero Energy Building) と知的生産性向上」を実現する次世代型オフィスがコンセプト。年間の1次エネルギー消費量が正味ゼロ、またはマイナスになる設計がされています。敷地内の井戸水の年間約17度という安定した温度を利用した空調設備とともに、自然の風も館内に取り入れて活用、デッキスラブを利用した天井放射空調を利用して冷気を自然に降下させたり、チラー(冷却水循環装置)の温度に連動して自動開閉するブラインドなど、様々な技術を駆使しています。電気は壁面や屋上の張り巡らされた太陽光パネル発電や排熱などを効率よく利用、ほかに水素を用いたハイブリッド蓄電による直流給電システムなどの試験的な試みもしているそうです。

URL: https://www.ici-center.jp/brain_spa_exchange.html
URL: https://www.maeda.co.jp/assets/file/tech_service/w_zeb_new.pdf

 いかがでしたか。このような自然の力を利用した省エネ対策に最新の技術が導入されているのを知り、この電気代高騰のご時勢、一般家庭にも早く普及しないものかなぁ!と切に願うのでありました。
 さて次回は番外編として、最近小さい街単位で取り組まれている、グリーンインフラの街づくりについてご案内したいと思います。